FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN
メール・マガジン
「FNサービス 問題解決おたすけマン」
================================================================
★第153号 ’02−09−20★
================================================================
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
プリミティブ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
●PC用語は別として
カタカナ英語はなるべく使わない主義ですが、敢えて<プリミティブ>
とするのは、その語感にピッタリの日本語表現が見付からないから。
<原始的>では些か古すぎる感じ、むしろ<素朴>と言うべきか、発展
の<初期的>段階ではあろうが、必ずしも未熟ではない。 しかしどう
見ても<洗練不十分>、、
もっと良くすることが可能なのに何故か旧態依然、という、当事者には
見えていないらしいが客観的には<何とかする必要>が見えている状態、、
映画「インナースペース」(アメリカ・1987)で、悪玉チームが善玉側の
研究所に闖入、制圧。 並んでいる設備類をジロリと見回し、悪玉リー
ダーの女性科学者が軽蔑を込めて呟く。 " Primitive, definitely! "
「あきれたもんね!」 なるほど、さすが字幕翻訳者のセンス。 その
気分の<プリミティブ!>を私が漏らしたのは、
*
過日のTV、今は珍しくない不況ルポ番組。 倒産工場から運び出され
て行く機械類が、「ハイテクを下支えした大田区の、」にしては30年前
のサーモ屋にも無かったような骨董品。 おお、プリミティブ!
だが、ムラムラしつつ考える。 そんな機械にも高精度を生ませた匠の
技能に、客たる大企業は正しく酬いただろうか? 十分な金額で敬意を
表しただろうか? まさか! しかしそれが、自分たちには無い技能を
提供してくれる人々に対する<感謝>の仕方かね? プリミティブ!
匠たちが正当に酬われていたら、もとが贅沢な連中じゃなし、倒産する
ことも、後継者難で悩むことも無くて済んだろうに。 ルポされた現実
こそ永い冷遇の証明。 技能者を支援せず、成果だけ摘み取る大手、
即ち下請け企業の犠牲の上に大企業が繁栄する日本的仕組み。 金の卵
を生む鵞鳥の腹を割き、肉まで食ってしまう、、 その野蛮なやり口が、
思慮不足からではなく、むしろ悪知恵を尽してなのだから恐ろしい。
匠たちの仕事一筋は尊いが、そんな客とのプリミティブな関係を何とか
せにゃ、と早く気付き、何らかの転換を図るべきでした。
************
●しかし状況の悪化は深刻、
イヤでも気付かされる現実。 金属プレス加工や樹脂成形、単純作業は
たとえ中国に奪われても金型は容易じゃない、必ず日本に残るはず、、
の見込みが外れて業界真っ青、というTVルポはその一例でした。
8月25日(日曜)のTBS報道特集、<金型産業の落日>。 ほーら、
言わんこっちゃない、番が回って来ました。 失礼ながら業界の皆さん、
甘かった。 あなた方にも達成できた技能、その気なら誰だって、とは
思わなかったか。 途上国、いつまでもプリミティブでいるものか。
*
<単純作業>が中国に移り始めた時点で、明日は我が金型業界も?など
思わなかったとすればそれは油断。 いや、情報や想像力の不足。
たとえば主人公の一人いわく、「取引先の紹介で中国の金型工場へ指導
に行ったら、日本の金型メーカーを超えた設備があり、上海交通大学を
出たエリートが月給2万円で3次元加工機を動かしていた」と。
その程度の情報、居ながらにインタネットでも読み出せるんじゃ?
「そして2年。 危機感を抱いて帰って来た彼を待っていたのは、その
取引先からの切り捨て宣告。 仕事のすべてを頼っていた相手に、、」
とナレーション。 おお何たるプリミティブ!
<紹介>の狙いくらい、<取引先>の動静から想像できたでしょう。
こりゃ自分の首を絞めることになるぞ、、とか感じなくちゃ。
そんなの、(私の経験は家電業界ですが)大手では昔ながらの常套手段。
まず依存させ、次に養分を吸い上げ、そして棄てる(か、食っちゃう)。
それが彼らの唱える<共存共栄>の実態、全く「あきれたもんね!」。
* *
その主人公は「要するに技術の力ではなく、マシンの力なんですよ」と
嘆いていたが、ちょっと外れてますね。 ソフト無けりゃただの箱、の
コンピュータ同様、<加工データ>が無けりゃマシンは動かない。
それは<金型加工の作業手順をデジタル化したデータ>のことで、本来
は金型メーカーの知的資産、いわば門外不出の秘伝。 なのに製品納入
の際、3次元設計図に加工データまで付けて出せ、と客が要求する由。
受注したのは金型、納入価格は<金型代>、だからその要求断って当然。
だが、「断れば次の注文を出さないと脅される」ので結局受けてしまい、
データを渡す。 と、客はそれを中国の業者に送り、マシンは動き、、
どちらにしても、客が「次の注文を出さない」ことに変わり無くなる、、
くらいのことは見当つきそうなものだが、、 あまりにもプリミティブ。
いっそ滅茶苦茶なデータを渡してやったら? モラルに欠けた客が
相手、こちらだけプリミティブに正直じゃ不公平でしょう。
実はサーモ屋も一再ならず大手の客に踊らされましたが、気付くや
敢然、その客をリストから外してスッキリ。 付き合うならウソを
つかない人に限ります。 プリミティブな信念、、
相変わらずのお座なりは通産省、その状況に対応すべく知的財産権条項
を契約書に盛り込むように「指導している」由。 どうせただのリップ・
サービス、しかも後の祭り。 公<僕>即ちプリミティブ唐変<木>、、
* * *
かくて金型製造技術は止めどなく中国へ流出、「大田区の金型製造業者
数はこの1年で600から半減」。 跡は空き家や更地となって虫食い
状態、街まで<空洞化>してしまいました。
一方、「最新式金型製造機械は香港や深センへ飛ぶように売れている」。
機械メーカーは買ってもらいたくて作っているのだから、金さえ払えば
誰にでも喜んで売る。 必要な周辺ノウ・ハウも提供します。
さらに、この国ではもう働く場所が得られない熟練工、工場長、管理者
たち、即ち<生きノウ・ハウ>が続々アチラの求人に応じる。 小企業
の主が自ら出て行く例も少なくない、という。 水は低きへ、、
年収500万、アチラではもちろん破格。 コチラの通念では不十分、、
でもそれは職があればの話。 もはや無いのだから、比べても意味なし。
エイ、と腹をくくって「日本の金型産業に別れを告げる熟練工」になる。
留守宅の妻の言葉、「主人の残りの人生、最後の機会。 相手が必要と
して下さるなら、、」 さよう、人間は<必要とされること>を必要と
する存在。 残された僅かな、プリミティブな、しかし生き甲斐ですな。
昔は「海外に雄飛!」とか言って、胸高鳴ることでしたがねえ、、
**********
●前途の目標を見失ったか
のような我が国ですが、それは目の付け方次第。 よく見れば、我々の
周りはこのようにプリミティブだらけ。 それが<これまでのやり方>
の成果で、それでは<まずい>のだから、
良くするには<やり方>を変えるほか無い。 即ちプリミティブを脱却
するには<変革>あるのみ。 しかしそれには相当の痛みが伴い、誰か
は抵抗する、、 で、容易には踏み切れず、踏み切っても進まない。
(総理、お察しします)
*
ガランドウ<落日>工場の壁に貼られたままの標語は、「世界が変わる
日本も変わる、我が社も変わろう未来のために」 どうやら<我が社>、
変わり方が不十分だったようです。
自己改革、それは30年前のサーモ屋ですら、、なんて胸を張るほどの
ことではなく、ただ血液B型のせいで同じことが反復できなかっただけ
のプリミティブかも知れませんが、掲げていたのは
いつまでも同じ作り方はしない、もっと楽で効果的な作り方を工夫する。
いつまでも同じ客を客としない、もっとタメになる客を求め、獲得する。
同じ客にはいつまでも同じものを売り続けない、もっと高度な仕様で、、
という方針。 何においても<自分たちを向上させる>が大きな
WANT。
それを、<トコトン>ではなかった▼にせよ、不撓不屈に実行したので、
当然、ついて来ない者も出ました。 F先生式人材判別法にも限界あり、
やむなきオン・ザ・ジョブ・セレクション。
▼<現状維持>に<不撓不屈>なプリミティブ社員もやはりいます。
が、その人種が必要、その人種に好適、な部署もある。 そこを
守ってもらい、それなりの処遇で満足してもらうのみ。
従って(労組から)教育(パパと揶揄された)的な私といえども<育つ
タイプを育てる>以上のことは出来ませんでしたが、それでも我が社が
(一分野で)米国メーカーを凌ぐ
Little Giant になれたのは事実だし、
その程度の話は我が社だけではなかったから、トータル、我が国の工業
水準は欧米に「追い付いた!」のです。
教訓:変革は進歩、現状維持はプリミティブ。
* *
リーダーが現状維持型ではいずれ行き詰まります。 ご本人は必ずしも
そう思ってない、つまり自己イメージではそれなりに進化を遂げている
つもりだろうが、あいにくこの世を支配するのは相対性原理。
周囲の進化速度が勝てば差し引き<ご本人>の負け。 それを知るのが
(たとえば)倒産に至ってから漸く、ではあまりにもプリミティブ。
しかし政治家、官僚、企業トップ、、 影響力ある人たちの大方が
<変わりたがらない>、<変わり足りない>プリミティブ国家日本。
遠からず<倒産>、、
経営内外の無数の要素、そのどれかは<時限爆弾>なのだから、せめて
<同じことの反復に満足しない>くらいの心構えで日常の行動を律して
いなくてはなるまい。 そのためには不断のSA、実行に先立つPPA、、
さよう、Rational Process はプリミティブ脱却のツール!
■竹島元一■
■今週の
<私の写真集から>は、 ★シカゴの虹★
================================================================
FNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFNFN
■
ホームページへ戻る